ほうじ茶と緑茶の違い。同じ葉から生まれる、まったく別の飲みもの

緑のお茶と、茶色のお茶。見た目も香りも味もまるで違うのに、ほうじ茶と緑茶は同じ茶葉から作られています。違いはたった一つの工程——焙煎です。

ほうじ茶とは、煎茶や番茶を強火で焙煎(ほうじる=焙じる)したお茶のこと。分類上は緑茶の仲間ですが、焙煎という一手間が、成分も香りも性格も大きく変えてしまいます。この記事では、その変化の中身と、ほうじ茶が「夜のお茶」と呼ばれる理由を解説します。

目次

焙煎で何が起きるのか

約200度の高温で茶葉を炒ると、三つの変化が起きます。

第一に、香りが生まれます。加熱によって糖とアミノ酸が反応し(メイラード反応。パンやコーヒーの香ばしさと同じ仕組みです)、あの香ばしい香りが立ちます。焙煎の香りには気持ちをほどく作用があると言われ、ほうじ茶の癒し系のイメージはここから来ています。

第二に、カフェインが減ります。カフェインは高温で昇華する性質があり、焙煎の過程で一部が飛びます。もともとカフェインの少ない番茶を原料にすることも多いため、ほうじ茶のカフェインは煎茶の半分程度、コーヒーと比べれば数分の一になります。

第三に、渋みが丸くなります。渋み成分のカテキンも熱で変化し、口当たりは軽く、すっきりします。胃への刺激が穏やかなので、食後や体調の優れない日にも飲みやすいお茶です。

緑茶とほうじ茶、どう使い分けるか

この違いを踏まえると、使い分けは自然に決まります。

朝と日中は緑茶。カフェインの覚醒作用と爽やかな渋みが、頭の切り替えに合います。夕方から夜はほうじ茶。カフェインが少なく、香ばしさが一日の緊張をほどいてくれます。食事どきはどちらでも合いますが、脂の多い食事にはほうじ茶のすっきり感がよく合います。

つまり緑茶とほうじ茶は、競合ではなく、一日の時間帯を分担するパートナーです。両方が棚にあると、お茶の時間は一日の前半と後半、二回になります。

ほうじ茶のおいしい淹れ方。熱湯で、豪快に

ほうじ茶の淹れ方は、煎茶と正反対です。

  • お湯:熱湯
  • 時間:30秒〜1分

煎茶のような温度管理はいりません。むしろ熱湯のほうが香ばしさが立ちます。うまみで飲むお茶ではなく、香りで飲むお茶だからです。

家で「炒り直す」という遊び

ほうじ茶には、家庭でしかできない楽しみが一つあります。自家焙煎です。といっても道具はフライパン一つ。古くなった煎茶や、開封して香りの落ちた茶葉を、油をひかないフライパンで弱火にかけ、木べらで混ぜながら数分。葉が茶色に色づき、香ばしい香りが立ちのぼったら、即席の自家製ほうじ茶の完成です。

香りが落ちて出番を失った茶葉が、焙煎によってもう一度現役に戻る。台所に広がる香りは、市販のほうじ茶では味わえないライブ感があります。火を止めるタイミングで浅煎り・深煎りも自由自在。お茶を「買って飲むもの」から「手を加えて楽しむもの」へ変える、最初の一歩としておすすめの遊びです。

「ほうじ茶ラテ」だけで終わらせないために

近年、ほうじ茶はラテやスイーツの味として広く知られるようになりました。入口としては素晴らしいことですが、砂糖とミルクの向こう側にある素のほうじ茶の魅力——軽さ、香ばしさ、飲み飽きのなさ——は、ストレートでこそわかります。

特に、良質な茎ほうじ茶(茎の部分を焙じたもの。甘い香りが特徴)や、浅煎りのほうじ茶は、ラテの原料とはまるで別の飲み物です。ラテからストレートへ。ほうじ茶の世界も、コーヒーと同じ順路で深まっていきます。

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この記事を書いた人

meiのアバター mei IKOI JAPANESE TEA 代表 / 日本茶インストラクター

日本茶、着物、器、茶道、季節を感じる暮らしが好きです。お茶を通して日常に余白を届けることを目指しています。

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